教授挨拶

共同研究講座教授
大貝 和裕

 この度、サラヤ株式会社様のご出資により令和5年4月1日付けで開設された「共同研究講座 看護理工学」の共同研究講座教授を拝命しました、大貝和裕と申します。看護理工学の名を冠する講座において、誰もが在宅で、安心して地元で暮らすことができる社会の実現に向けて、全力を尽くす所存でございます。

 私は2008年に金沢大学医学部保健学科検査技術科学専攻を卒業し、その後同大学大学院で医用工学(根本鉄先生)と神経再生(加藤聖先生)を専攻いたしました。その後、同大学健康増進科学センターに採用となり、須釜淳子先生(当時のセンター長)のご指導のもと、看護の世界に初めて足を踏み入れました。その頃に、当時東京大学大学院医学系研究科老年看護学/創傷看護学の真田弘美先生(現 石川県立看護大学学長)や峰松健夫先生(現 同教授)とお目にかかる機会が得られ、それ以来、先生方のご指導のもと、看護学研究に携わっております。

 さて、令和元年時点での日本の高齢化率は28.4%、実に4人に1人以上が65歳以上となっており、医療を受ける側と提供する側のアンバランスが際立ってきていることは論を待たないところであります。しかし、この高齢化率は日本の平均値です。過疎地域、たとえば本講座の属する石川県立看護大学がある石川県の「奥能登」といった地域では、より深刻な状況です。このような地域では、「体調は悪い、だけど病院にはかからない」といった方や、実際は検査値が悪いにもかかわらず「今は問題ないから大丈夫」といって、受診しない方などが多くいることが考えられます。この状況を放置すれば、症状の悪化、健康寿命の短縮、QOLの低下、医療負荷の増大といった諸問題につながります。

 これを解決する方法の一つに、高齢者が自宅で検査をできるようなシステムを作ることが挙げられます。本講座では、「スキンブロッティング」という革新的技術を用いて、自宅にいる高齢者が自分の健康状態を簡単に、非侵襲的かつリアルタイムに測定?記録できるシステムの開発に取り組みます。さらに、記録したデータを元に、将来何らかの疾患を発症する可能性を早期に予測できるAIの構築にも取り組みます。これらを組み合わせた「健康管理システム」を通して、地域在住高齢者の健康を維持し、安心して生活できる社会を実現することを目指します。

 上記目標を達成すべく、教室員、連携講座の先生方、大学院生らと共に日々努力をして参ります。関係各位におかれましては、益々のご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。